今月の絵本『ビロードのうさぎ』【連載:Girly Time by acanel 】

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「別れてほしい」と言われた時、私がすぐ思ったのは意外にも「有給と高速バスどうしよう」だった。菜々19歳、某地方在住、アパレル店員。15歳から付き合っていた同い年の元彼氏は今年から東京の大学に行き、私達は遠距離恋愛。

 

私は100万円貯金できたら東京に行く予定だった。まるで「NANA」の奈々みたいだな、と思っていたけれど、まだ地元にいるのにフラれちゃった。奈々とは全然違うね。遠距離恋愛をはじめて、たった半年でフラれるなんて笑っちゃう。「他に好きな子ができた」ってテンプレートみたいな言葉、聞きたくなかった。

 

東京に遊びに行く一週間前に電話で別れを告げてくるなんて嫌な奴。その日にあわせて、美容院行った帰りっていうタイミングも最低。キレイに染まったグラデーションが、汚く感じてきた。本当は金髪にしたかった。でも元彼氏は「明るい色は苦手」って言うから。毛先だけ金髪にしたのに。

 

来週、それを見せるのを楽しみにしていた私が、アホらしくてしょうがない。一ヶ月前から取っていた有給と高速バス、どうすんの。東京に行ってフラれるのも嫌すぎるけど、今の現状も嫌すぎる。

 

・・・

結局、予定通りの日に有給消化。
せっかくなので、1人で東京に遊びに…なんて気力はなく、朝から夜まで地元でお買い物。通販サイトならワンクリック買えるものを、わざわざ実店舗に行って自分で探し歩いた。ひたすら友達や家族へのプレゼントを来年分まで買いまくった。人のことを考えていると気が楽だ。今なら苦手なゴシップ雑誌も楽しく読めそう。

 

甥っ子へのプレゼントは絵本が良いな。そう思って夜遅くの本屋さんにいた時、ふと外を見た。そして、見てしまった。夜行バス。私が乗るはずだった夜行バス。無断キャンセルした罪悪感と、本当ならあのバスに乗っていることを思うと急に泣きそうになった。

 

でも絶対に泣きたくなかった。別れてからこの一週間も1回も泣かなかったし、彼の事を思って泣くのは嫌。目の前にあった絵本を持ってレジに直行した。タイトルも何も見てないけどPOPに「絶対に泣く絵本!」と書いてあったから。甥っ子用ではなくて自分用に。

 

どうせ泣くのなら、キレイなものを見て泣きたいから。

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買った絵本は「ビロードのうさぎ」。うさぎのぬいぐるみの物語。酒井 駒子っていう人の絵がすごくおしゃれ。もう私の涙腺は限界で、1ページ目から意味もなく泣き始めて、最後のシーンでめちゃくちゃ泣いてしまった。

 

泣く口実が欲しくて泣いているのか、うさぎの扱いが今の自分となんだか被ってしまったのか。喉が変になるくらい、ずっとずっと泣いた。

 

やっぱり辛い悔しい寂しい。中学の終わりから4年も付き合っていたのに、遠距離だって前向きだったのに。こんなひどい終わり方ないよ。感情が高ぶるほど、好きだったことを実感して、辛い。

 

これだけ辛いということは、好きだったし、好かれているという自覚もあったんだろうなぁ。終わりがくるなんて、本当に考えてなかった。

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失恋したから髪を切る。というと何だか恥ずかしいけれど、彼のために染めた髪色が嫌だからなのであって、ちょっと理由が違う、はず。美容院に行かずに自分で切るのもアレだけど、昨日ちょっと買い物しすぎたから…。

 

薬局で買ったブリーチで金髪にするなんて、なんだか高校生の夏休み、みたい。市販品で染めるのも、脱色も、初めてでドキドキする。どんな髪色になるのか楽しみだ。

 

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