12月のZINE【連載:Girly Time by acanel 】

acanel

こんにちは!アキャネルです。

 

今月は、私の妹が書いた物語にイラストをつけたZINEです。140文字以内の物語を、毎日1つずつ書いていたそうで、その中から気に入ったものをチョイスさせていただきましたー!

 

今回もトレーシングペーパーを使っています。トレペ、ほんと可愛い。ずっと使い続けたい。

 

ginkomeline

 

それでは12月のZINE「SNOW POWDER」はじまります〜!

202012-top

クリアファイルに入れています。
表には白ポスカで書いた文字。

202012-crystalfile

 

2020.12.23 Snow Powder  acanel

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イラストはコピー用紙、文字はトレペ。
閉じていないので好きに動かせます。

トレペを浮かせたりずらしたり。

イラストの見え方が変わるので面白い。
物語を変えて重ねてみても、新たな発見がありそう。

202012-2全部で9枚のイラスト

202012-3文字を重ねるとこんなかんじ

トレペだけの小説って、あるのかな?
読みにくいだろうけど透けてる紙だけって素敵だな

 

それでは、1枚ずつご紹介していきます。

 

一つ星

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真っ暗闇の中でさまよった時は空に浮かぶ一つ星を目指しなさい。

まっすぐ迷いなく歩き続けるのです。

きらきら白く輝く星の光をほんの少しも見逃さず、ほんのひとかけらも取りこぼさぬように。ずっとずっと見続けなさい。足の裏のマメが潰れても、血が滲んでも、一切疑わないで歩き続けなさい。

心が暗闇と同化したかのように無心で歩き続けた先に、一つ星が目の前にあるでしょう。

 

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三日月のハープが奏でる曲は夜の帳が下りると同時に流れ出す。

その美しい音色は星々を淡く光らせる。

ついでに空を飛ぶ鳥たちは自分たちの寝床に帰る支度を始める。

空に浮かぶ月はハープの音色の高低によって満ち欠けを繰り返す。

最高音は満月、最低音は新月。三日月は徐々に低音域に入っていく音程であった。今夜は三日月。ハープと同じ形をした月の日だ。

 

遥かな

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「遥かな時間を過ごしてます。今から五千年前……つまり、縄文時代の中期に生まれました。見ての通り、アルビノのため、親は集落の呪術師にボクを預けました。体よく捨てられたんです。呪術師は神々の生贄ができたと年頃になるまで育てました。十八歳になったとき、ボクは生贄にされましたが残念ながら神様はボクを気に入らなかったみたいで呪われました。老いも来ず死にもできず、今に至ります」

 

無月

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月がこの世から消えた。

なんの前触れなく夜に浮かんでいるはずの月が煙のように跡形なく消えていた。新月の日ではない。それどころか満月になる日で、天気もその日一日中良かった。満月を拝めれたはずだった。しかし、月が砕けるように崩壊して消えた。

人々はパニックになった。なぜなら、月が壊れたと同時に嘲るような笑い声が世界中に響き渡ったからだ。ちょうどその時、僕はたしかに聞いた。

 

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古びた門の横にずらりと並ぶ柵とそれに絡みつく蔦薔薇の枯れたのを見て、自然と息を詰めた。

いかにも厳かな雰囲気を漂わせる門の雨風にさらされてほとんど判別ができない彫刻類が「歴史」を感じさせる。

今日からわたしはこの屋敷の関係者になるのだ。どういった関係かと言われると返答に困る。世間一般的には嫁入りだと取り繕うべきだろうが。

 

秋は夕暮れ

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秋と冬の狭間にあるひんやりとして空気が澄んでいる今の時期が好きだ。

雪に覆われてしまう前の、温かい暖色系の色彩に彩られた空間は美しい。舌鼓を打ちたくなる実り豊かな収穫物も幸福に一役買っていると思う。温かい室内で温かい飲み物、ココアやコーヒー、それとも紅茶を飲みながら読書する快適さは書き尽くせない。

そして窓から眺める夕暮れはこの時期が一番美しいと私は考えている。

 

ふわふわ

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新調したばかりの、冬用ラグの上に寝そべると手足にふわふわした感触が気持ちよくて、ついつい無駄に手足を動かしてしまう。

キッチンからちょいと持ち出した有名店のマシュマロをひとつ、ふたつを口の中に放り込む。口内でラグに負けないくらいふんわりした柔らかい食感に目をすがめる。電気ストーブで温められた部屋で食べるマシュマロは美味なり、と独りごちてみた。

この至福の時よ!

 

吐息

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僕はとある私設図書館の会員となり、そこを利用している。速読が得意な僕はやろうと思えば、新設されたばかりで中身が乏しいここの全ての本を読み尽くしてしまうだろう。そんな野暮な真似をする気はない。なぜって理由は二つある。一つ、温かい雰囲気が気に入っているから。二つ、時々、吐息をつく受付の女子大生らしい女の子に会いたいから。

 

オルゴール

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オルゴールを開けると回転木馬の人形が回り出す。同時に流れる音楽は、チャイコフスキーのくるみ割り人形だ。

たぶん題名を知らない人でもどこかで聞いたことがあるだろう有名な一節が耳に流れ込んでくる。

くるみ割り人形なら、それに関した人形にすればいいのに、とくるくる回る回転木馬をつんと慎重につついてみながら、わたしはくすりと笑ってしまった。そんななんでもない日だった。

 

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end.

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また来月会いましょう!

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